ベイブレードバーストGTに関する報告書(再提出)
〈概要〉
アニメ第4期は主人公を赤刃アイガから虹龍ドラムへと交代、タイトルに「GT(ガチ)」を付加。2019年より1年間のクールでコロコロチャンネルにて配信。通称ガチ(以下、ガチと表記)。コミックスとしては13巻の後半から16巻の前半までがガチの内容の範囲となる。なお、理解を進めやすくするために今回も随所で他作品との比較、引用を行なうので御承知おき願いたい。
〈ストーリー〉
◆原作◆アイガとバルトの決戦を観戦していたのはBCソルにおけるバルトの後輩、虹龍ドラム。日本人の父とフランス人の母とのハーフである彼は両親の都合で父の弟にあたる叔父、タンゴの家に住むことになり、日本へとやって来る。日本の小学校に転校したドラムは草葉アマネ・タカネの兄弟と知り合う。タンゴはベイクラブ「ビクトリーズ」を営んでおり、アマネたちも所属していた。同じくクラブに所属する金道イチカの兄、フミヤは別のクラブにいるが、何かとドラムたちに関わってくる。そんな折、世界王者(この時はアイガ)への挑戦をかけた試合が日本で試合が行われることとなり、BCソルでの同期・茜デルタが帰国する。デルタとのバトルで今なお彼との差が埋められないことを自覚するドラム。アイガへの挑戦はデルタとドラムの、三人での戦いとなるが、その最中にアーサーが乱入し、ドラムたちのベイを破壊。アーサーのブレイン的存在のグウィンはドラムに興味を持つが、人との関わり方がわからず暴走。アーサーとグウィンに一矢報いるため、デルタはドラムと組んでタッグマッチを提案する。
◆アニメ◆BCソルに所属していたドラムが叔父を頼って日本へやってくるところは原作と同じだが、転校先の小学校の描写は一切なし。ベイのイベントで出会ったアマネとタカネがビクトリーズに所属していたことや、同時に叔父タンゴもイベント会場におり、金道イチカも加えて常に四人のメンバーで活動することになる。そんな折、ベイカーニバルという大会が催され、ドラムは並み居る強豪を倒して優勝。彼の活躍を知ったデルタはBCソルを辞め、ドラムに挑戦するためにビクトリーズを訪れる。デルタには歯が立たないドラム、アマネたちも含めて修業の旅に出るタンゴ。一方のデルタはブリント・デボイに挑戦するため、彼の別荘を訪れる。旅先で知らされたのはバトルジャーニーという、現世界チャンピオン・アイガに挑戦する大会で、主だったブレーダーが集結。アイガとデルタのバトルの最中に乱入してきたのはアーサー。HELLを組織し、wbba.に対抗しようとするアーサーとwbba.の威信を賭けて対決する羽目になるビクトリーズ。ドラムに興味を持って接近してきたグウィンもアーサー側につくことに、また、一度アーサーに敗れたものの、自信を取り戻し且つ考えを改めたデルタはビクトリーズの一員となってHELLとの試合に臨む。
◆登場人物◆ガチから新たに加わった人物を中心に紹介。ここで紹介していないキャラやアニメオリキャラについてはベイブレード公式ファンクラブを参照されたい。
◇虹龍ドラム◇3代目主人公。緊張すると表情が恐くなるが礼儀をわきまえた、素直で正義感の強い少年。同期のデルタに憧れている。
◇草葉アマネ◇弟思いで仲間思い。ドラムの良き仲間となる。
◇茜デルタ◇BCソルでは次期トップ、実力№1でポストバルトと言われている。自他に厳しい孤高のブレーダー。
◇金道フミヤ◇ベイクラブ「スパークデビルズ」のキャプテン。
◇草葉タカネ◇アマネの弟。
◇金道イチカ◇フミヤの妹。兄に反発してビクトリーズに入る。
◇アーサー・パーシヴァル◇ベイの王を名乗り、弱いベイは駆逐すると宣言する自信家。
◇グウィン・ロニー◇天才少年。ベイを作らせてもその天才ぶりを発揮する。
〈考察〉
①設定と背景
今回はBCソルに所属していたドラムが日本に来るという、主人公の逆輸入である。転校先が米駒学園かどうか明確な記述はない。活動の場は学校の部活動ではなく叔父が経営するベイクラブで、小学生のスポーツ系習い事のスイミングスクールや体操クラブのようなもの、或いはスポーツ少年団といったところか。主人公のサポート役を黄山兄弟からアマネにバトンタッチし、また、ベイバシリーズでは必須と言ってもいい兄弟設定も、主人公当人ではなくアマネとフミヤが請け負っている。原点に立ち返った内容で、学校とスポ少の場面がほとんどの学園物である。
バルトとアイガのタイトルマッチの時、ドラムは十歳且つアイガを先輩と呼んでいたことから、この時は四年。転校して五年三組に入っているので、日本に来るまでにはいくらかのタイムラグがある。主人公として活躍するのは五年生というのがシリーズの習わしとみていい。また、ドラムのBCソル時代での回想で、デルタは十一歳と紹介されているため、ドラムよりもひとつ年上ではないかと思われるが、ドラムの転校した時期が記されていないので、デルタが誕生日を迎えたあとだとしたら、同学年となる。
アニメの設定は先にも記したように、学校の部分が省かれているため学園物の側面はない。ビクトリーズ内での練習風景は多いが、原作にあるような野外で釣りなどをすることはなく、後半は各大会とHELLの本部での対決の場面が大半を占める。
②ファンタジーとリアル
本作の原作に関して言えば、ファンタジーの要素はアーサーとグウィンの存在になるが、アーサーの登場がコミックスの15巻と、かなり後部の方であり、スネークピットもどきのベイクラブを運営しているものの、街にある近代的な施設のため秘密結社感はなく、ファンタジー色は薄い。グウィンも浮世離れはしているがファイほどではない。何より闇落ちする者がいないので、全体的にリアルが強い作品となっている。
アニメに於いても、グウィンとアーサーに関する描写はいくらかファンタジー色が強いが、そこだけが浮くほどのものではない。どちらかといえばデルタが訪ねたブリントの存在と、彼の別荘(ノイシュバンシュタイン城風)がファンタジー感を強くしている。
③主人公の周囲の人々
叔父タンゴとビクトリーズの仲間たちがドラムの支えとなる人々である。皆で修業として野山に行ったり、ファミレスで食事をしたりする場面が多く、家族のような結束感がある。そのあたりは群れることを好まない、単独行動のデルタとの対比にもなっている。また、家族はあくまでも身内(母・弟妹)で、仲間はベイクラブといったバルトや、身内は妹一人だが学校に寝泊まりしているために、学園全体が家族のようにバックアップしているアイガとも状況が異なる。
アニメでは野山やファミレスに行く描写がないので、ドラムにとってビクトリーズはあくまでも仲間であり、ファミリーとまではいかない。ただし、タンゴという保護者・引率者がいるためか、バルトやフブキにとってのベイクラブ、超王のヒュウガたちのボンバーズ(クミチョーは年齢的にタンゴの域ではない)に比べると「大人が関わっている子供の活動組織(スポ少・ボーイスカウト等)」感が強い。
④ベイ大会の構図
これまで描かれていた国内の団体戦・個人戦のような大会はなく、世界チャンピオンであるアイガに挑戦するタイトルマッチと、アーサーたちと決着をつけるタッグバトルだが、後者はデルタが提案したものであり、公的な大会として認められるのか不明。
アニメではまず国内の大会(ベイカーニバル)が開催され、そのあとはアイガとのタイトルマッチをバトルジャーニーという大掛かりな大会に拡大している。さらに、新しいスタジアム披露のエキシビションマッチが催されている。
⑤ライバルたちとの関係性
ドラムとデルタはシリーズの中で最もわかりやすい主人公とライバルの描かれ方がなされている。チームの同期で始まるところから、その後の関わり方も王道の流れで、デルタが次第にドラムの実力を認め、最終的には二人で協力してアーサーたちと戦うあたりはベイシリーズよりもスラダンの流川と花道の描かれ方に近い。グウィンは爆ベイのブルックリンに近いキャラで、ライバルというよりはバトルを通じて当人を「まとも」に戻すといったところか。
アニメではデルタの描き方がさらにシビアになる。半分闇堕ちしているような状況であり、それが対アーサーの敗北により、廃人のようになってしまうところが憐みを感じさせる。その後、ドラムによって癒された彼の変貌ぶりは驚くべきものがある。
〈所見〉
前作の超ゼツが異色だったせいか、王道に戻ったという感がある。誰も闇落ちすることなく、安心して読める、観られるといったところではないだろうか。超ゼツのあとでは物足りないと思われる向きもあるかもしれないが、児童向き漫画はこのぐらいが落ち着きどころではないか。何よりドラムの人間性に魅了される。天然なバルト、曲者のアイガに比べると素直で、生意気な発言や傍若無人な振舞いがなく、万人に愛される主人公である。女子に想いを寄せられる描写があるのも彼だけであり、そんなドラムに心を開いていくデルタも微笑ましい。
ベイバのシリーズはアニメよりも原作の方がシビアだという印象があったが、ガチに関してはアニメの方が厳しい内容だと感じた。原作を拝読してからのアニメ視聴だったが、アーサーの登場などがあったものの、全体にほのぼのしていた原作に対して、思った以上にアニメがきついと感じる場面が多かった。どちらにしろ、デルタの変貌ぶりは全ライバル中、特筆すべきであると思う。
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前回のレポートに加筆する形で完成させました。堅苦しい記述ですが、次回はもっとくだけた(笑)内容でお届けしますのでよしなに。